2006年度2学期
「福祉国家の歴史と現在」

(新潟大学法学部「特殊講義(戦後政治)」
早稲田大学政治経済学部「国際政治経済研究)」)


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シラバス

[概要]

この授業では、戦後の先進諸国の政治経済体制を「福祉国家」を軸に考察します。20世紀の自由民主主義諸国は、福祉国家を基礎として発展を遂げてきました。しかし1980年以降、この体制はどの国においても大きな変革を迫られています。その背後には、グローバル化などの共通の要因が指摘される一方で、具体的な再編のあり方は、国ごとにきわめて多様です。この授業では、日本、イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランス、アメリカなどを比較しながら、それぞれの国がどのような理念の下で福祉国家を形成し、現在どのような形で再編を進めているのかを検討します。

[到達目標]

(1)日本を含めたそれぞれの国の戦後体制が、異なる経路をたどって形成されてきた事実を知ること。
(2)現代福祉国家の抱える諸問題を、ある程度構造的に理解すること。
(3)日本の今後の針路について、自分なりの意見を持つこと。

[受講要件等]

3年次1学期までの政治系科目(「政治学原論」「西洋政治史」「政治過程論」など)を履修済みであれば、理解が容易になると思います。

[履修上の注意]

毎回B6版の小ペーパーを配布しますので、疑問点や意見を書いて提出してください。

[授業計画]

(1)イントロダクション

T. 福祉国家とは何か
  (2)政治学における福祉国家論(近代主義、マルクス主義、新制度論)
  (3)フレームワーク:社会規範と権力資源

U. 福祉国家の形成
  (4)20世紀初頭―自由主義の終焉
  (5)戦間期―フォーディズム体制と社会保険
  (6)戦後福祉国家の形成
     イギリス「ナショナル・ミニマム」/スウェーデン「レーンメイドナー・モデル」/
     フランス「社会的連帯」/ドイツ「社会的市場経済」
  (7)戦後福祉国家の発展
     北欧モデル/大陸モデル/自由主義モデル

V. 福祉国家の変容
  (8)福祉国家批判(ポスト・フォーディズム、新自由主義)
  (9)グローバル化時代の福祉国家@―第三の道と社民主義
  (10)グローバル化時代の福祉国家A―保守主義レジームの模索

W. 日本の福祉国家
  (11)日本型福祉レジームの形成と変容
  (12)現代日本の政治的対立軸―2005年体制?

X. 福祉国家の行方
  (13)南北問題と国際福祉レジーム
  (14)まとめと展望

[成績評価の方法と基準]

出席(50%)、期末試験(50%)の合計による相対評価。試験はキーワード説明と論述問題から成る。

[使用テキスト]

毎回レジュメを配布します。

[参考文献]

新川・井戸・宮本・眞柄『比較政治経済学』有斐閣アルマ、2004年
エスピン=アンデルセン『福祉資本主義の三つの世界―比較福祉国家の理論と動態』ミネルヴァ書房、2001年
岡沢・宮本編『比較福祉国家―揺らぎとオルタナティヴ』法律文化社、1997年
広井良典『日本の社会保障』岩波新書、1999年
新川敏光『日本型福祉レジームの発展と変容』ミネルヴァ書房、2005年